「自然」であることの大切さ。例えば、武道の教えの中には上虚下実という言葉があるのですがこれは簡単に言うと上半身はリラックス、下半身はしっかり台地を踏みしめるという意味です。緊張して身体に力が入りすぎると肩が上がり、ふと息を抜いてリラックスすると肩が下がります。現代社会の中でもカチカチに緊張する面接や、上司とのやりとり等でもそうだと思いますが、頭の中は真っ白になり肩は上がり息も浅くなります。そして深呼吸をして肩を回したりして何とかリラックスしようと試みるのは、緊張した心を身体からコントロールしようとする試みです。心身一如や心身一体という言葉がありますが、身体と心はつながっているのでどちら側からでもアプローチが出来るということですね。面接や大切な場面でなぜリラックスを目指すかというと、本来の自分の自由な状態でないとパフォーマンスが下がってしまうからです。せっかく今までがんばってきたのに本番で緊張しすぎて本来のパフォーマンスが発揮できないなんてあまりにも残念です。
そして武術における上虚下実の話しに戻ると、相手と向かい合ったときに恐怖や緊張のあまり心と身体が固まると、相手の動きに対して反応が出来ない、本来の自分の動きが出来ない、それ即ち危ういわけです。なので本来の自分の動き、パフォーマンスを発揮するためには上虚下実でいることを目指しなさいという武の教えがあるのです。話しは長くなりましたが、「自然」に戻ります。森の木々やヤナギ等、大きな強い風にあおられてもユラユラと風にまかせて揺れることで通常ではポキンと折れるようなことはありません。そして大地とつながる幹や根っこはしっかりとへばりつき立っています。森の木々やヤナギの姿は上虚下実なのです。即ち、「自然」の中で折れずにに生きていく為に木々やヤナギは上虚下実を身につけたのです。我々人間も、よく「自然体で」という言葉を使いますが、具体的に自然体とはと聞かれるとうまく表現するのは難しいのではないでしょうか。
顔の表情は穏やかで、首はすっと真っすぐ立ち、肩は上がらず腰の上に背骨がすっと立っている状態、そのような表現になるでしょうか。施術の目的は痛みを和らげたり、機能障害を改善したりすることも当然ですが、目指すところは身体の自然体を取り戻すことにあります。