数週間前にご来院された患者様(60歳・A子様・女性・仕事は歩行が多い)の主訴は、「2カ月前に仕事中、違和感のあった左膝に急に痛みが走り動けなくなった、しばらくすると歩けた。しかしながら今でも歩くと痛いし正座も出来ない。それと右のお尻と太ももが3年前から疲れると痛いというかなんというか、、、。なんとか楽になりたい。」でした。
しっかりとお話しをお聞きし、徒手検査を行い、私はいくつかのリスクを懸念し病院様への紹介状を書きました。左の膝は変形性膝関節症へのリスク、右足は梨状筋症候群による坐骨神経のトラブルか、或いは神経根障害のリスクがあるのではないかと判断しました。
あくまでも想像ではありますが左膝に起きたトラブルは、3年前から続いていた「右臀部から右足にかけての痛みやだるさ」を左脚でかばってきた結果ではないかと考えました。
紹介状先の先生による御高診結果は、左膝は変形性膝関節症。右臀部から脚にかけての痛みは変性すべり症による脊柱管狭窄症でした。言い換えると神経根障害です。不幸中の幸い、いずれも初期でした。患者様はつらさを耐えがんばって生活をされてみえたのでしょう。改めまして先生による御高診に心より感謝申し上げます。
変形性関節症は、色々なところに発症するものですが、今回は負担のかかっていたであろう左膝に発症してしまいました。関節というのはとても複雑ですがよくできていて、正しく使えていればいいのですが、何らかのバランスが崩れてしまうと、関節液のまわりが悪くなり潤滑がわるくなるだけでなく、栄養と老廃物の交換が出来なくなり修復も疎かになってしまったり、可動のバランスが悪いと本来はきれいに面と面で稼働しているものが点と面になってしまったり、面が削れていったりした結果、どんどん関節内が変形していってしまうというものです。また体重の増加によってもそのリスクは高まります。進行していくと関節軟骨もすり減ってしまい、骨と骨が直接当たってしまうこともあります。
すべり症は、積みあがっている背骨が前方へずれてしまうものです。ずれることによって背骨の後ろ側にある神経の束を通す脊柱管が狭くなったり、神経が末梢へ向かう為の出口が狭くなったりし神経が圧迫されます。そうなると脊柱管狭窄症です。大きく分けて三つあり、馬尾型(脊柱管の中心で圧迫される)・神経根型(馬尾から神経が分枝した後に背骨の出入り口で圧迫される)・混合型(そのどちらも)です。
患者様は神経根型でしたので症状が出たのは右側のみでした。間欠性跛行という、疲れてくるとしびれや痛みが強くなり動けなくなってしまう症状も、まだ軽微な範囲でとまっています。進行する段階でいると初期といえます。
やはり、人生には無理するべき時と無理してはいけない時があるのでしょうか。残念だったことは、脊柱管狭窄症を患い右側下肢に症状が出ていたが、それに気づかないまま我慢して左脚でかばいながら生活していた。その結果、左膝に負担がかかり変形性膝関節症に至ってしまったであろうということです。典型的な身体のバランスが崩れて起きてしまう悪循環です。でも今気づけたということは不幸中の幸いでよかったことかもしれません。脊柱管狭窄症にしても、変形性膝関節症にしても、今気づけたことによって今から予防に取り組めるからです。医学的にも保存療法で進行を防いでいけるといわれています。それから定期的に当院へ来られるA子様これからの日々、仕事と運動、栄養、休息、そして骨格の健康を保つ為、心を込めて施術させて頂きます。